洋梨は官能の果物だ。
でも、あまり知られてない気がする。
洋梨について、「あまり美味しくない梨」という印象を持っている人も多いと聞く。
大抵の場合、それは洋梨を梨だと思って食べるからではないか、と思う。なので
敢えて言おう!洋梨は梨ではない!
種類的には梨なんだけど。←
楽しみ(愉しみ)方は和梨と洋梨は全く別だと思っていいというか思ってくれ。
和梨と同じ感覚で洋梨を楽しもうとすることは、食べる方と食べられる方双方にとって不幸でありオススメできない。
洋梨は、買ってからしばらく追熟させる必要があり、この追熟前に食べてしまうと「なんか美味しくない梨」になってしまう。
和梨はシャリシャリした食感と香りの良い果汁がたまらない果物だ。洋梨も、追熟前(お店に並んでる時)は和梨のようにシャリシャリした食感をしている。だが、甘みは少なく独特の芳香に至ってはわずかだ。ここで食べると「なんだか美味しくない梨だなぁ」になってしまう。
少し置いておくと、触った時に皮にピンとした張りがなくなっている。ここで焦って食べてはいけない。ここで食べると、「ちょっと時間が経っちゃったリンゴ」のような、ポクポクとした食感で甘みも薄く、やっぱり「なんだか美味しくない梨だなぁ」になってしまう。
もう少し置いておこう。すると微かに香りを放つようになる。触ると皮に張りはなく、むしろ柔らかさを感じて「ちょっとヤバい?(熟しすぎた?)」となった頃が食べ頃だ。
果物ナイフの刃を入れると、剥こうとする前にズルりと皮が剥けて、刃からつたわった果汁が滴り落ちる。
果肉はよく熟れた桃のように柔らかく、強い芳香を放ち、果汁を湛えて白く美しく輝く。
その果肉に、優しく口づけるように唇をあて、溢れ出る果汁を一滴も無駄にしないよう、吸い付くようにそっと噛んで欲しい。
口の中で柔らかい果肉が甘くぬっとりと舌に絡みつき、アイスクリームのようにトロけていく。甘く芳醇な香りが口の中を満たした後に鼻に抜け、一口ごとに官能的な時間を与えてくれる…
これが洋梨の醍醐味だっ!
種類によって追熟すると表面の色が変わったり、お店によっては追熟した食べ頃の洋梨を置いているところもあるので注意が必要ですが、手に取ってみて「さぁ、私を召し上がれ」と誘ってきたら食べ頃です。
それまでは美味しくなる呪文をかけながら、彼女(と書いて洋梨とよむ)が準備万端になるまで待ちましょう。
それでは、美味しい洋梨を
Bon appetit !! (召し上がれ)