学生のころ、夏休みの宿題で"お年寄りから戦争体験をきいてくる"というものがありまして。


当時は、話を聞いても"物がない"という状態が理解できなかったり、"毎日芋なんていいなぁ"などとトンチンカンな感想を持ったのでした。
それくらい、当時の私には戦争は"生まれるずっとずっと前に起こった、遠い過去の出来事"としか感じられませんでした。自分の今いる世界と、どこにも結びつかなかったんですよね。



親になったある日。
一人のおばあさまの戦争体験の話しが、とても鮮やかに思い出されました。

その方は終戦時は満州にいたのですが、夫は兵隊にとられて生死不明。ただでさえ過酷な引き揚げを、乳飲み子を含む幼い娘二人を抱えて行ったのです。それはそれは過酷で、食べるものもろくになく、乳はでるはずもなく…過酷な道のりに、幼い姉妹は餓死してしまいます。
「(下の子は)死んでいるとわかってても、背負って歩き続けていた」「(上の子は)おかあさん、おなかすいた、しか言わなくなって、最後はそれすらも言えなくなって…」


今現在、その当時のおばあさまと同じく二人の幼い娘を育てているせいか、おばあさまの話は突然記憶の彼方からやってきて、津波のように私を襲います。
頭の中で流れる映像には、くったりした次女を背負い、疲れてぐずる長女の手を掴んで引きずるように歩いている、虚ろな目をした自分があらわれます。





世界中の人々が、飢えてやせ細っていく子どもの姿を、焼かれていく姿を、苦しむ姿を、見なくていい日がくることを祈ってやみません。